1987年の国鉄分割民営化で誕生し、九州地域において鉄道事業をはじめ様々な事業を展開している九州旅客鉄道株式会社様(以下、JR九州様)。地域住民の足として九州の交通インフラを支えるとともに、美しい自然や歴史ある街並みを活かした多彩な観光列車を運行し、九州の魅力を発信する役割を担っています。そのJR九州様では、お客様からの問い合わせを受け付けるコールセンターにおいて、オペレーターの応対品質標準化や、在宅コールセンター実現にむけた環境整備などを実現するため、2024年3月より「Omnia LINK」の利用を開始しました。
導入の目的
リアルタイムのモニタリングや応対スキル標準化、VOC分析などを実現したい
「安全・安心なモビリティサービスを軸に、地域の特性を活かしたまちづくりを通じて、九州の持続的な発展に貢献する」という2030年長期ビジョンを掲げているJR九州様。「住みたい、働きたい、訪れたい」と思われるまちづくりを実現するため、地域の活性化・魅力向上に一層注力されています。こうした将来像に向けて進んでいくために欠かせないのが、地域に住む人々はもちろん、国内外からの観光客なども対象とした顧客サービスの充実です。そして、安全・安心な鉄道運行とともに顧客満足を支えているのが、お客様からの様々なお問い合わせを受け付けるコールセンターです。
「運行情報の確認、インターネット列車予約やEXアプリの操作に関するお問い合わせ、遺失物のご相談、介助依頼など、幅広い内容のお問い合わせを受け付けています。電話でのお問い合わせは、基本的に当コールセンターに集約しています。ご年配の方やお子さま、さらには地域の方から海外の方まで、さまざまなお客様にご利用いただいていますので、わかりやすく適切な情報を提供することがセンターの役割です」(松﨑様)
九州旅客鉄道株式会社
鉄道事業本部
営業部 総合販売センター
松﨑 勇介 様
JR九州様では2024年6月より、駅へのお問い合せもコールセンターに集約しました。土日祝日も休まず、数十名のオペレーターが交代でお客様からのお問い合わせを受け付けています。そこで得たご意見が駅設備や車両設備の改善につながる例も多く、JR九州様にとって、コールセンターの重要性はますます高まっています。
コールセンターでお客様に質の高いサービスを提供するためには、オペレーターや管理者の負担を減らしスムーズな業務運営を実現することが不可欠です。JR九州様も、以前からシステムを導入して管理や業務の効率化に取り組まれていましたが、システムの活用面では課題がありました。
「管理者は音声でしかオペレーターの応対をモニタリングできず、問題が発生した場合は途中からモニタリングすることになるので、そこに至るまでの詳細な経緯を把握するのに苦労していました。また、お問い合わせが多岐にわたるため必要な業務知識も膨大で、どうしてもオペレーターのスキルに差が生じていました。さらに、稼働状況やVOCの分析面でも、レポート機能の操作が複雑なため活用しきれていませんでした」(進様)
また、台風等の影響でコールセンターがある場所にオペレーターが出社できないケースに備える必要性から、場所にとらわれない働き方を実現したいと考えていました。そこでJR九州様は、クラウド型コールセンターシステムの導入について、検討を始めました。
選定のポイント
複数の課題を一気に解決でき、将来実現したい姿をイメージできた
九州旅客鉄道株式会社
鉄道事業本部
営業部企画課
進 基輝 様
前システムが更新時期を迎えることを機に、2022年頃から新システムの導入に向けて約5社の製品を調べていたというJR九州様。抱えていた問題を解消できるシステムかどうかを踏まえて、数社に絞り込んで比較検討した結果、ビーウィズの「Omnia LINK」を採用することに決めました。
「『Omnia LINK』を導入すれば、オペレーターに対するリアルタイムでのテキストモニタリング、応対スキルの標準化、VOCの分析といった課題を解決できると考えました。また、福岡・天神や横浜にあるビーウィズのコールセンターで実際に会話内容が自動で文字起こしされているところや、在宅勤務中のオペレーターが業務に取り組む様子を映像で見学でき、自分たちが将来実現したい姿をイメージできました」(進様)
JR九州様では、一気にシステムを切り替えることによる混乱を防ぐため、2024年1月から3月にかけて前システムを並行稼働させつつ、徐々にOmnia LINKへ切り替えていきました。また、システム切り替えの期限が決まっていたため、オペレーターへの教育にかける時間は決して余裕があるとは言えない中、オペレーターに負荷をかけずに短期間で教育するための取り組みを実施しました。
「前システムから画面も操作方法もガラッと変わりましたので、オペレーターの中には慣れるまで苦労する人も出てきます。そこで、ビーウィズからレクチャーを受けた私たちが先行して実際の『Omnia LINK』での操作に慣れるように努めました。そして、とくに業務に必要と思われる部分を抜粋して、ビーウィズからいただいた資料とは別に自分たちで資料を作成し、オペレーターの教育を実施しました」(木坂様)
導入の効果
リアルタイムテキスト化や生成AIによる要約でセンターの業務効率が向上
九州旅客鉄道株式会社
鉄道事業本部
営業部 総合販売センター
木坂 菜美 様
取材時点では「Omnia LINK」を使い始めて数カ月のJR九州様ですが、リアルタイムテキスト化と生成AIによる「文章要約機能」をはじめとする様々な機能を活用しており、その導入効果を実感されています。
「電話をかけてくださったお客様をお待たせしている際に、今は何人待ちなのかをガイダンスで流せるようになりました。もしかしたら前システムでも可能だったのかもしれませんが、今回はビーウィズにフォローしていただいて実現できました。このまま待つのか、かけ直すのかの判断材料をお客様に提供できるようになったことは、良かったと感じています」(河﨑様)
「オペレーターはこれまで、聞き逃しがないように電話応対中はメモを取っていましたが、そこには個人情報が含まれることもあり、慎重な取り扱いが必要でした。Omnia LINKは会話内容が自動でテキスト化されるので、メモを取る必要がなくなり非常に助かっています。また、会話の内容が簡単に要約できることで、電話終了後に応対履歴を記録する時間が大幅に短縮されました。どちらの機能も、オペレーターからの反応が非常に良いです」(木坂様)
九州旅客鉄道株式会社
鉄道事業本部
営業部 総合販売センター
所長代理
河﨑 勇輝 様
「私たちは九州の人間ですから、イントネーションが違うことがあり、リアルタイムでの自動文字起こしがうまく変換できていないことがあります。しかし、そのデータを自動要約すると正しい言葉になって変換されるのです。前後の文脈から判断しているのだと思いますが、この精度の高さには驚きました」(松﨑様)
リアルタイムテキスト化機能により、管理側はオペレーターの通話内容をテキストでモニタリング可能になりました。また、応対内容がテキスト化されて残ることで、更なるVOC活用の足掛かりともなりました。そのほかの課題についても「Omnia LINK」を活用して解決するための準備を進めています。
「各オペレーターのレポートを2024年4月から作成し始めています。どの対応にどれだけの時間がかかったのか、平均の後処理の時間はどのくらいかなどを可視化しています。こうしたデータを積み重ね、活用することで今後、各オペレーターに合った指導や支援ができるようになると考えています」(松﨑様)
「将来は、コールセンターのオフィスに出勤しなくても、どこからでもオペレーターが電話を取れるようにしたい。もはや在宅ワークも当たり前の時代になっていますので、オペレーターの人材確保という観点からも、いざというときには自宅でも業務をおこなえるような環境の整備に取り組んでいきます」(進様)
システムの本稼働後もビーウィズとの定期的なミーティングを開催し、コールセンターをより良いものにしていくためのディスカッションを続けているJR九州様。描いたイメージの実現に向けて、ビーウィズには次のような期待をしています。
「これまでも『こういうことがしたい』という要望に、かなりタイムリーに動いていただいて感謝しています。今後も、オペレーターの負担を減らして、より応対品質を高めていくという意味で、AIなどを活用した業務の自動化という部分も進めていきたいので、関連する情報があれば、随時教えていただければと思います」(松﨑様)
「私たちはコンタクトセンター専業の会社ではありませんので、最新のトレンドなどわからないこともあります。そのため、ビーウィズが自社コールセンターで得た知見や、他社の取り組みに関する情報提供は、非常にありがたいと感じています。これからもビーウィズには、コンサルタントのような役割も担っていただけますとありがたいです」(河﨑様)