コールセンターで使われる電話には大きく「ハードフォン」と「ソフトフォン」の2種類があります。最近では場所を取らずシステム連携がしやすいソフトフォンのほうが多く使われていますが、利用用途によってはハードフォンを使う現場も存在します。それぞれの違いや、向き・不向きなどを解説します。さらには今後のトレンドについても予測してみたいと思います。
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「ハードフォン」「ソフトフォン」、違いや特徴は?
端的に言いますと、ハードフォンは物理的な電話機による通話、ソフトフォンは専用のソフトウェアをインストールしたパソコンによる通話を指します。
<ハードフォン・ソフトフォン>
通話品質という点ではどちらも同じで、ともにネットワーク環境に依存します。
コスト面では、ハードフォンは初期費用として電話機代がかかります。ランニング費用は両者で大きな差はありません。
このように物理的な電話機があるかないかが、ハードフォンとソフトフォンとの大きな違いですが、現場の運用面ではそれぞれ向き・不向きに加え、さまざまな特徴があります。以下にまとめました。
「ハードフォン」
■ SVの席などに向いている
SV(スーパーバイザー)ら管理者は常に自席にいるわけではありません。電話が鳴った際に席まで行って受電するようなシーンを想定すると、ソフトフォンよりも電話機を使ったほうが素早い対応ができると言えるでしょう。
■ 一斉鳴動の現場に向いている
あるエリアの電話機が同時になることを「一斉鳴動(いっせいめいどう)」と呼びます。現場では「チーム全員の電話が鳴ると、新人が最初に取るルールにしている」「部門代表にかかるとメンバー全員の電話が鳴り、対応できる人が受けるようにしている」などのケースがあります。ハードフォンはそうした対応に向いています。
■ 電話機があることで心理的な安心感がある
これは見た目の問題として、物理的に電話が置かれている状況のほうがしっくりくるという意味合いです。実際にそうした理由からハードフォンを選ぶケースは存在します。
<ハードフォンの特徴>
「ソフトフォン」
■ 電話機を置く場所を取らない
物理的な電話機がないため、その分のスペースが不要になります。限られた空間を有効活用するにはソフトフォンが向いています。
■ CTI連携がしやすい
ハードフォンでも連携は可能ですが、その際はソフトフォンによる制御が必要になることが多いです。その点、ソフトフォンはCTI連携が容易であるという特徴があります。ただ、セキュリティに厳しい企業などでは、外部システムとの連携を避けるため、あえてハードフォンを使用するところもあります。
■ 在宅のコールセンターが進めやすい
電話機を必要としないため、自宅などでもコール業務が行いやすくなります。場所を選ばずに仕事ができると言えるかもしれません。なお、昨今ではテレワークが増えていますが、職場でも家でも同じ電話番号で受電したいという場合にもソフトフォンが向いていると言えます。ログインすればどこでも同一の電話番号から受けることができるのです。
■ 停電でも業務を続けられる
災害などで停電が起きた際に、ハードフォンはネットワーク機器が使えず、通話ができなくなります。ソフトフォンであればパソコンの電源が残っている限りは、Wi-Fiやテザリングによって停電時もネットワークはつながります。つまり拠点のネットワークに依存しないため、万が一の際にも対応が可能です。
<ソフトフォンの特徴>
上記以外の細かな違いとしては、ハードフォンはどのボタンを押せばどこにつながるかといったルールを決めて明示しておかないと、現場のオペレーターが混乱してしまう可能性があります。センターによっては「保留」「転送」「内線」などの操作を行う際に「保留」には金色のシールを貼り、「保留時は金のシール」と指示するといった具合に運用しています。
ソフトフォンであれば画面上のボタンに「保留」や「転送」と記されており、どこを押せばどこにつながるかが一目瞭然なので、ハードフォンのような混乱はなく利用できます。
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<ソフトフォン イメージ>
ソフトフォンへの移行が加速する可能性も
現在、コールセンターの現場ではソフトフォンが多く使われていますが、この傾向が進む可能性があります。
その理由の1つとして、昨今の世界的な半導体不足の影響でハードフォンの供給が減っていることが挙げられます。実際、大規模なセンターを作ってハードフォンを導入しようとしても調達できないといった問題が生じています。ハードフォンを供給する企業の中には、以前取引があった会社がソフトフォンに移行して使わなくなった中古のハードフォンを買い戻して、在庫を確保しているところもあるようです。
別の理由としては、新型コロナウイルス感染症によって在宅でコール業務を行うケースが増えていることが影響しています。新たにセンターを立ち上げる際も、あらかじめ在宅業務を想定してソフトフォンで対応するという選択も起こり得るでしょう。
このように、半導体不足によるハードフォンの供給減少とコロナ禍における働き方の変化などによって、コールセンターでは今後さらにソフトフォンへの移行が加速することが想定されます。
Vol.9 「ハードフォン」と「ソフトフォン」違いと特徴
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