そもそも「ACD」とは?
ACDとは「Automatic Call Distribution」の略で、「着信呼自動分配装置」や「自動呼分配」などと訳されます。
通常、ACDシステムにはさまざまな機能が備わっていますが、今回はその中でもメインとなる「着信呼均等分配」にフォーカスして説明します。というのも、ACDに付加されている多くの機能が、着信呼均等分配を生かすために備わっていることが多いためです。
この着信呼均等分配とは、コールセンターにかかってきた電話をオペレーターに割り振る機能を指します。
昔は1つの電話番号に1つの電話機が紐づいていました。そのため、10個の電話機を設置してあれば、おのずと10通りの電話番号が必要だったわけです。
しかしACDによって1つの電話番号を複数の電話機で受電することが可能となります。その際に、かかってくる呼(コール)を分配する役割を担うのが着信呼均等分配です。
<着信呼均等分配イメージ>
着信呼均等分配では、着信した時点で待機時間が最も長いオペレーターから優先的に振り分けて通話接続します。これはインバウンドのコールセンターでは必須の機能で、この機能があることにより特定のオペレーターに呼を集中させず、稼働を均等化することが可能になります。
なお、ACDの呼分配は、基本的に次の3つのステップを踏みます。
① 電話をかけてきたお客様を識別
② 待ち時間や質問内容に応じて順番を決定
③ 応対可能なオペレーターに割り振る
上記のような手順でACDは着信呼を分配しています。
スキルに応じて呼を振り分ける
ACDを使って着信呼を振り分ける際に、オペレーターの保有スキルや習熟度に応じて振り分け先を決めておくこともできます。
例えば簡単な問い合わせであれば経験の浅いオペレーターが対応し、故障対応や操作方法の問い合わせなど一定の知識が必要な場合はベテランのオペレーターが応じるといった具合です。
<スキルによる呼分配イメージ>
実際の現場の運用では、スキルレベルに応じた着信呼の振り分け方法を、呼量に合わせて変えることもあります。
例を挙げると、呼量が減ってコールセンターの人員に余裕がある時間帯は、あえて経験の少ないオペレーターに優先的に着信させるようにします。こうすることで新人オペレーターを教育するわけですね。その間、ベテランのオペレーターは別の業務に就きます。
このように、ACDはコールセンターにつながる1つの電話番号に多くのお客様が待機していて、それを適宜オペレーターに割り振る役目を担っています。
これをリアルの場に置き換えると、「郵便局の窓口」をイメージしてもらうといいかもしれません。
郵便局に訪れた人が列を作って並んでいる場合、職員の手が空いていれば、郵便だけでなく保険の窓口でも書留の対応をしてくれたり、貯金の窓口で切手を販売してくれたりします。ベテランの職員さんは保険や貯金だけでなく他の業務をこなせるスキルレベルを持っているので可能になります。
(そして込み入った話になると奥から責任者が現れます。これはコールセンターで何かトラブルがあった際に管理者につながるのと似ていますね)
<郵便窓口とスキルの考え方>
着信呼均等分配以外の機能
先述のとおり、ACDには着信呼均等分配以外にも複数の機能があります。そのうちの代表的なものを以下に紹介しておきます。
◇ログイン管理機能
オペレーターのログインIDやパスワードを管理する機能です。
◇オペレーターのステータス管理機能
ログイン・ログアウト・待機・通話・後処理・離席など、作業の状態やステータスについてオペレーターごとに管理する機能です。
◇ジョブ管理機能
オペレーターごとに対応可能な仕事内容を管理できる機能です。対応できるジョブに応じて呼の分配先を決定します。
◇オペレーターのスキル管理機能
オペレーターごとのスキルレベルを管理しておく機能です。このスキルレベルをもとに着信呼の分配方法を決めたりします。
これら以外にもACDには、転送機能や統計管理機能などいろいろなものが備わっていることがあります。
こうした機能を活用して、コールセンターに寄せられる着信呼をオペレーターのスキルや状況、あるいは呼量に応じて、最適に振り分けることができるのがACDの最大の特徴であり、魅力と言えるでしょう。
あふれ呼対策やオペレーターの教育など、インバウンドを行うコールセンターの業務最適化を図る上で、ACDは非常に大切な役割を果たしています。
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