新型コロナウイルス感染症の影響で、コールセンター業界でも「在宅勤務」が注目されています。とはいえ、実際には在宅で電話対応などを行っているケースは少ないのが現状です。そこで在宅勤務で業務のフルリモート化を行う際に必要なことや、導入によるメリット、さらには社会的な意義について解説します。今後リモートワークは広がっていくと思われますので、ぜひ参考にしてください。
>>"在宅コールセンター導入を成功させるポイント"を導入事例から学ぶ
フルリモート化が難しい5つの理由とその対処法
コールセンターの業務を在宅勤務で行うことについて、以前から各社がさまざまな試みをしていましたが、なかなか前に進みませんでした。しかしコロナによって、その機運が一気に高まりました。
ビーウィズでは、「Bewith Digital Work Place(ビーウィズデジタルワークプレイス)」という名称で、在宅勤務によるコールセンターサービスを提供しています。当初は、在宅勤務をしながら、採用の手続きや契約の更新などで必要に応じてコールセンターに出勤してもらっていました。しかし今ではセンターに来なくても勤務を続けることができるフルリモート化を実現しています。
コールセンター業界では、このように完全なリモートワークというのはまだ進んでいません。多いのは、チャットやメール対応に特化したものです。電話対応を在宅勤務で行っている企業はかなり少ないと言えます。
そこでフルリモート化が進まない理由を挙げながら、それに対してビーウィズがどう対処したか解説します。
◆理由1:システムの構築が難しい
採用から入社、契約の延長、退職までの手続きを完全にフルリモートで行うには、そのためのシステムを構築する必要があります。そこの障壁は決して低くはありません。ビーウィズでは上記のすべてをオンライン化しました。専用のシステムを作るのには時間がかかりましたが、一度も会うことなくオペレーターを雇用することを可能にしました。
<フルリモート化で考えるべき工程>
◆理由2:使えるPBXが限られる
オンプレミス型のPBXでは在宅勤務に対応できません。PBXはクラウド型である必要があります。ビーウィズでは自社開発のクラウドPBX「オムニアリンク」を活用しており、これがあることでテレワークが可能になりました。昨今のテレワークの広がりとともに、オムニアリンクの引き合いも増えています。
◆理由3:研修が難しい
例えばオペレーターが受注システムの操作を間違うと大事故になります。そうした事態を避けるために事前にシステムについてしっかりと研修する必要があります。ただ、リモートで研修する際、画面共有で講師の操作を伝えることは可能ですが、オペレーター側がどのように操作しているかを確認するのは難しいです。そこでビーウィズではオペレーターの手元と顔が見える専用の仕組みを作りました。講師は教えながら、オペレーターがうまく操作できているか確認できます。
<双方向型オンライン研修ツール>
◆理由4:セキュリティ面が不安
在宅勤務時の懸念点として個人情報の漏洩があり、そうしたセキュリティ面の不安から在宅対応をためらうケースもあります。ビーウィズでは漏洩を防ぐための工夫をしています。その1つが、オペレーターがパソコンの画面にスマートフォンを向けると、画面が自動的に黒くなる(ブラックアウト)システムを導入しています。ほかにも、オペレーター以外の人が画面の前に座ると、顔認証機能によってブラックアウトする仕組みも活用しています。
◆理由5:リモートでの採用が不安
ビーウィズでは全国を対象に採用活動を実施しています。説明会、書類提出(エントリーシートに記入)、面接までをオンラインで行いますが、リアルで対面しないため人材の質を見極める必要があります。そこで「リモートワーカー認定制度」という独自の制度を実施しています。パソコン操作の基本から、応対品質、セキュリティなどについてオンラインで講座を実施し、テストに合格した人だけを採用します。採用から就労、退職まで直接会うことがないので、人選には慎重を期しています。
<「リモートワーカー認定制度」で一定の質を担保する>
「リモートワーカー認定制度」の教育例
応募数は10倍、採用コストは5分の1に
上に述べたようなフルリモート化によって、採用面で非常に大きなメリットが生じています。
例えば、九州の拠点の仕事を行うオペレーターを採用する場合、センター勤務であれば通勤できる範囲に住んでいる人が対象になりますが、在宅勤務で完全フルリモートでの採用のため全国から人を募ることが可能になります。
実際に募集をかけると、非常に多くの応募が寄せられます。その数は、センターの採用に比べて10倍の数にのぼります。完全テレワークのため通勤の必要がないのが応募者にとって魅力のようです。加えて募集エリアが全国と広いため、必然的に人が集まりやすいということもあります。
また、応募の傾向としては、都道府県別の偏りはなく、属性や性別、年齢などは通常のセンターにおける採用時と違いはありません。つまり属性はそのままで、純粋にボリュームが増えるイメージです。
応募数が多いため、選考を厳しく行い、優秀な人材を獲得することができます。
選考はまずZoomで採用説明会を実施します。予約なしでだれでも参加が自由です。説明会では、朝礼の時はパソコンのカメラに顔を見せて話すなど、在宅ワーク時のルールを説明します。この説明会の段階で、応募を辞退する人が一定数います。
説明会の次は、エントリーシートによる書類審査を行い、最後にオンラインで面接を行って、採用する人を決定します。
昨今は人手不足のため、コールセンターではできるだけ多くの人を採用しようという傾向がありますが、在宅勤務に関しては人材を厳選して採用することができます。
採用コストも通常の5分の1に抑えることができています。すぐに想定の応募数に到達するので、求人媒体に掲載する期間が大幅に短くなるためです。また、無料の媒体でも応募が集まるので、その意味でも採用コストの抑制につながります。
コロナが広がり始めた当初は、在宅のコールセンターは安全性の観点から注目され、必要とされました。しかし今後は、採用コストを抑えてよい人材を獲得できる手段として注目されていくかもしれません。
>>"在宅コールセンター導入を成功させるポイント"を導入事例から学ぶ
リモートワークで地方創生にも貢献
コールセンターの在宅勤務を推進することは、社会的にも意義のある取り組みと言えます。
というのも、場所を選ばすに仕事をできるため、過疎地に暮らしていて遠い場所まで通勤しなければいけなかったり、そもそも住んでいるエリアに仕事がなかったりする人であっても、家にいながら就業することが可能になるからです。
<在宅勤務であれば場所を選ばずに自宅で就労できる>
在宅勤務を推進することで、地方に暮らす人に条件のよい就業の機会を提供でき、結果的に地方創生に貢献できます。こうした点から、コールセンターのリモートワークは投資家からも評判がよいです。
今後、コールセンター業界でも在宅勤務の動きは着実に進むと思われます。優秀な人材を獲得できるだけでなく、社会的にも意義がある取り組みですので、ぜひ可能な業務から実行してもらいたいと思います。
「在宅勤務」のフルリモート対応。必要なシステムや実施のメリット、社会的な意義とは?
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