スキル別やオペレーターごとの優先順位
一般的に「スキル」と言うと、学習や訓練で習得した「技術」を指しますが、コールセンターでは窓口に寄せられる「問い合わせ内容の種類」のことをスキルと呼びます。「受注スキル」「返品スキル」「料金変更スキル」といった具合です。
コールセンターに求められる業務の幅は非常に広く、1人のオペレーターが一度ですべてを習得するのは難しいです。そのため、まずは量が多く、業務の難易度が低いスキルをオペレーターに割り当てます。オペレーターはそのスキルの習熟が進むと、新たなスキルの研修を受け、その業務を習得し複数のスキルを身につけていきます。このようにスキルの種類を積み上げていくことが、コールセンターのオペレーターのキャリアパスでもあります。
<スキルとオペレーターの習得度合いイメージ>
では、新人からベテランまでさまざまな能力のオペレーターのリソースを、その日のお客様対応に適切に配分するにはどうすればよいでしょうか?
現場をマネジメントするSVは、各スキルの入電状況や問い合わせの傾向を見ながら、スキルごとの人数配分や1人のオペレーターが受電する順番(プライオリティ)をコントロールし、センターを効率的に稼働していく必要があります。
1人のオペレーターが複数のスキルを担当している場合、どの電話に優先的に対応するかはその時のセンターの状況に応じて変化します。スキルに関係なく、待ち時間が長いお客様から順に対応することもあるでしょう。あるいは、Aというスキルのオペレーターは十分に配置できており、Bというスキルのオペレーターが少ししか出勤していないのであれば、Bの対応ができるオペレーターにはAのスキルを着信させないようにして、Bのスキルに専念してもらうという選択肢もあるでしょう。
または、入電が少なくオペレーターの待ちが生じている時に、かかってきた電話をどのオペレーターに優先的に着信させるかを決めなければいけないケースもあります。1つのやり方としては、メンバーの中で最も経験が浅い人に優先的に対応してもらいます。そうすることで経験を積ませ、そのスキルの習熟度を高めさせるわけです。
<複数のオペレーターのうち誰に着信させるか?>
さまざまなスキルレベルを持つオペレーターたちをマネジメントする上で、最適な優先順位というのは最終的にはコールセンターごとの考え方(センターポリシー)によって異なります。
例えば、そのセンターが優良顧客を何よりも大事にするのであれば、多少稼働率が落ちても、優良顧客用のスキルを最優先にして、そのスキルには必ず人を待機させておき、それによるコスト増は許容するという方法もあり得るでしょう。
あるいは、常に特定の回線を確保しておくのがコスト的にもったいないのであれば、オペレーターに複数のスキルを割り当てておき、その中で優先順位をつけておくということも可能です。つまりABCの3つのスキルを割り当てておき、最優先のAに待ち呼があれば優先的にその電話に出るといったイメージです。
スキルを外す際に気を付けること
複数スキルの対応が可能なオペレーターを優良顧客やプレミアムプランの窓口専従にすることは、PBXの設定で簡単にできます。ほかのスキルを外して、プレミアムプランのスキルに絞っておくのです。
また、事前に予測した呼量であればいいのですが、予測を上回ってある1つのスキルの呼量が増大した場合に、その特定スキルでオペレーターが埋まって、ほかのスキルの回線がつながらなくなることがあります。そんな時はSVが、何人かのオペレーターから呼量が多いスキルを外します。そうすることで、特定スキルの呼量増大の影響を受けることなく、ほかのスキルを着信することができます。
ただ、スキルを外す際には注意が必要です。というのも、スキルの「戻し忘れ」が発生するリスクがあるからです。
プレミアムプランだけにスキルを絞って設定したり、呼量が多すぎてスキルを外したりして、元に戻すのを忘れると、そのオペレーターの席はほかのスキルが着信しない状態のままになります。その結果、別の日にほかのスキルに対応しようとしても、その席の電話は鳴らないといった事態が生じます。
さらにこんな事例もあります。オペレーターの人数に余裕があって、担当するスキルの呼量が少ないとします。そんな時に、育成のために新人にだけそのスキルをつけておきます。しかし、戻すのを忘れた結果、次の日もその新人だけが着信し、気が付けば呼が集中するなんてことも起こり得ます。
こうした事態を回避するために、スキルを外した際にしっかりと記録しておいたり、終業時のSVのチェック項目に「スキルを戻す」という項目を入れたりしておくとよいでしょう。
>>コールセンターの改善は事例で学ぶ!Omnia LINKを導入して業務改善につながった事例を確認する
スキル以外の優先順位について
コールセンター運営では、スキル以外の視点によって優先順位をつけることがあります。以下にいくつか紹介します。
◇待機時間や稼働率を目安にする場合
どのオペレーターに優先的に着信させるかを考える場合、よく使われる指標が待機時間です。待機時間が長い人から優先的に着信させます。別の指標としては、稼働率が挙げられます。稼働率が低い人から優先的に着信させるというものです。どちらが正しいというわけではなく、センターポリシーによって異なります。
なお、待機時間や稼働率など優先度の設定は、PBXで簡単に行うことができます。
<Omnia LINK_待機時間や稼働率など着信させる優先度の設定画面>
◇在宅オペレーターの場合
最近では在宅ワークのオペレーターが増えてきました。ただ、在宅の場合は稼働率が落ちてしまった時にセンターの状況が見えないために、孤独を感じやすくモチベーションが下がってしまいがちです。そこで在宅オペレーターに優先的に受電してもらうことで、常に業務がある状態にするという方法もあります。
また、センターにいれば紙の資料の入力業務なども発生しますが、在宅ではそうした仕事をするのが難しいです。仕事の内容が限られる在宅では、電話対応のプライオリティを高くするという戦略が有効になります。
◇電話とメールのマルチタスクの場合
オペレーターが電話対応とメール対応の両方を行っている場合、電話はメールに比べて疲労度が高くなります。そのため午前と午後で電話とメールの対応を交代するという具合に、仕事の優先順位を一定の間隔で切り替えて、オペレーター間で仕事の負荷が等しくなるようにします。こうすることで従業員満足度が低下しないようにします。
ここまで見てきたように、スキルだけでなく稼働率や待機時間、在宅ワークなどいろいろな側面からコールセンターの優先順位を考えることが可能です。
これらを組み合わせることで、稼働率やコスト、品質、従業員満足度などを見極めていきます。
プライオリティをどう設計するかで、そのコールセンターのカラーや特徴が現れます。優先順位を決めてセンターをどうデザインしていくか、SVの腕の見せ所と言ってもよいでしょう。
どのスキルを優先させるべきか?コールセンターの「プライオリティ」を考える
PDFを開く