待ち呼は上限を超えるとつながらない
待ち呼は、「キューイング(queuing)」や「待機呼(たいきこ)」、「あふれ呼」と呼ぶこともあります。通話待ちの状態を指します。
より詳しく説明すると、待ち呼はセンターのPBXに入っている呼になります。企業に訪問して受付の待合室で待っている時のイメージです。つまり電話における“待合室”で待機している状態が待ち呼と言えます。
待ち呼はコールセンターのPBX内に入ってきている状態ですから、何人の待ち呼が発生しているかもリアルタイムレポートや電話機などで把握できます。企業の待合室でも来客が何人待っているかが分かりますよね? それと同じです。
待ち呼の数にも限界があり、設定した数を超えるとPBXの手前の公衆網で電話が切られてしまいます。これを「ビジー返し」と呼びます。お客様からすると、電話をかけてもつながらず「ツーツーツー」という音が聞こえる状態です。
例えば待ち呼の数を10チャネルと設定しておくと、10人はオペレーターにつながるまで音声ガイダンスを聞きながら待つことができます。しかし、それ以上のコールがあった場合、つまり11人目の電話がかかると、設定した待ち呼の数をオーバーするので、そのお客様はビジー返しとなり、かけてもつながりません。
このように待ち呼というのは、コールセンターのPBXに着信している状態です。そしてPBXに着信するためには、PRI回線のチャネル数が足りている必要があります。
(PRI回線のチャネル数については、こちら)
待ち呼を分かりやすくイメージするために、人気のラーメン屋さんを想像してみてください。
席が10席の店内はすでに満員。店の外には5人が並んでいます。この場合、店内の10人が、コールセンターのオペレーターと通話している人で、店の外に並ぶ5人は、待ち呼の状態です。そのラーメン屋さんには残りの麺が15人分しかないとします。この場合の麺がチャネル数ですね。ですから、店外の行列に6人目が来ても、麺(チャネル)が足りないので、その人は食べられずに帰ってしまいます。これがビジー返しです。
<待ち呼の考え方_イメージ>
なお、待ち呼の人数はPBXの設定によって簡単に変更できます。オペレーターが少ない夜間の時間帯は待ち呼の人数を減らすことも、自動で設定しておくことが可能です。
これを上記のラーメン屋さんに例えると、夜になり店員が帰ってしまったのでラーメンを作るリソースが極端に減り、それに合わせて店内の席数を3席に限定したとします。それにもかかわらず、店外の行列に5人並べてしまうと店に入るまでの待ち時間が長くなりすぎてしまいます。そこで、店外で待てる人数を制限して1人しか並べないようにしてしまうイメージです。
あるいは、待ちたくないというお客様には、SMS(ショートメッセージサービス)を送ってウェブの予約フォームに誘導したり、連絡先を音声やボタン操作で入力していただき、オペレーターが空いたら折り返し連絡するようにする仕組みもあります。このような方法をとれば、お客様に長時間お待ちいただくような事態を防ぎ、クレームやブランドイメージの低下といったダメージを軽減できるでしょう。
さらに細かな点としては、PBXによっては待ち呼で待機中にかかる音楽も自由に選ぶことができます。コールセンターで待機中に流れる音楽としては、オリビア・ニュートン=ジョンの『そよ風の誘惑(Have You Never Been Mellow)』が知られますが、PBXによっては企業がCMで使用している音楽などを、自由に設定しておくことが可能です。電話における待合室が、よりゴージャスになってきているのです。
応答率と稼働率のバランスを
待ち呼をどう捉えるかはコールセンターによってさまざまな考え方があります。
その1つが、待ち呼を多く設定し常にお客様の行列を作っておくことで、売り上げ拡大につながるというものです。オペレーターは並んでいるお客様の注文をどんどん受けていけばよいという発想です。待たされることで満足度の低下を懸念する向きもありますが、ビジー返しで機会損失を招くくらいなら、待ち呼の状態で待機してもらい、どこまで待つかはお客様にゆだねるわけです。その場合、お客様が待つことを途中でやめて電話を切る「放棄呼(ほうきこ)」もある程度は許容する必要があるでしょう。
一方、待ち呼でお客様に待ってもらうよりも、ビジー返しをしたほうがいいという考え方もあります。
例えば人気のコンサートのチケット予約などで一時的に入電が集中するようなケースでは、待ち呼がいくつあっても足りないですし、通話中でビジー返しをしても、お客様はまたすぐにかけ直してくださると考えるわけですね。センターによっては、待ち呼がどんどん増えていくよりもビジー返しをしておいたほうがいいと割り切ることもあるでしょう。
<待ち呼設定の違い_イメージ>
待ち呼にせずにビジー返しをすることは、コスト面でのメリットがあります。
というのも、待ち呼をたくさん抱えると、それだけチャネル数が必要になります。チャネルは維持費がかかるのでコストになります。また、待ち呼に入っている間も、通話料が発生します。フリーダイヤルならば企業側に、ナビダイヤルならば一部はお客様の負担になるかもしれません。
別の考え方として、お客様を待たせる待ち呼をよしとせず、顧客満足度を高めるためにかけるとすぐにつながるセンターを構築したとします。その場合、応答率はかなり高いものになるでしょう。もちろん狙い通り、顧客満足度も上がると思われます。しかし、この状況を作り出すと、センターの稼働率はかなり低くなってしまいます。
先ほどのラーメン屋さんの例で言うと、お客さんを店外に並ばせるのは申し訳ないからと、店内に100席を設けるとどうなるでしょう? ランチタイムの12~13時は埋まっても、それ以外の時間帯はガラガラで90席くらいが空いてしまいます。100席に対応するために配置していた人手は無駄になります。
この例からも分かるように、すぐにつながるセンターというのは、ピーク時はよくてもそれ以外の時間帯でオペレーターが余ってしまうわけです。お客様を待たせないような高い応答率を求めれば求めるほど、オペレーターの稼働率が下がるという問題が生じます。それを考慮すると、一定の待ち呼も必要だという判断もあっていいでしょう。
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<稼働率と待ち呼>
待ち呼は生産性の向上につながる?
コールセンターによっては、待ち呼がないこともあります。
これは戦略的に企業が決めることですが、例えば新しいスクリプトを試したり新しいシステムをテストしたりするようなパイロットセンターのような位置付けの拠点では、量をこなすことが目的ではないため、待ち呼をつけないという考え方もあります。
また、オペレーターの定着率が高い一方で、採用までに時間がかかりがちな地方拠点は、急激な繁閑(はんかん)の波に対応するのが難しいことがあります。その場合、ひとまず拠点の体制は変えず、コールフローの一番上で(つまり複数拠点の中で真っ先に受ける拠点として)対応し、そのセンターであふれたコールを別のセンターに流すという戦略もあります。こうしたケースでも、待ち呼をあえて設定しないということがあり得ます。
ただ、このように待ち呼を設定していないセンターでは、現場の感覚として「今日はいそがしいのか暇なのか分からない」という状況が生まれるようです。お客様が待っている行列が見えないために、生産性が上がりづらくなる可能性があります。待ち呼があることでオペレーターの心理として「次の人が待っている」という気持ちがわき、それが生産性の向上に寄与することも想定されます。
実際の現場では、待ち呼をどのくらい設定するか、あるいは回線数やチャネル数をいくつに設定するかというのは、運用しながらチューニングしていくことが多いです。稼働率やチャネルの維持費、顧客満足度なども考慮しながら、待ち呼を設定することが大事になります。また、そもそもお客様にどのようなサービスを提供したいのか、KGIやKPIはどのように設定されているのかといったことも重要なポイントです。
このように、ひと口に「待ち呼」と言っても、センターのKGIやKPIから回線設備、人員配置やコールフローに至るまで、様々な要素が絡まっています。これらについても本連載で解説していますので、ぜひ他の記事も参考にしてください。
実際に、待ち呼を許容するのはよしとしても、待ち呼の数や待ち時間を減らして業務を効率化するために日々対策を練られているコールセンター管理者・SVの方も多いかと思います。そんな課題の解決に役立つものとして、最後にビーウィズが提供するクラウドPBX・コールセンターシステム「Omnia LINK(オムニアリンク)」をご紹介いたします。
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[最終更新:2023年12月1日]