電話回線には、アナログ回線・ひかり電話回線・デジタル回線など様々ありますが、コールセンターで使用されている電話回線で代表的なものが「PRI(Primary Rate Interface)回線」というデジタル回線です。
PRI(ピーアールアイ)とは、ISDN回線のインターフェースに関する規格のひとつ。例えば、NTTが主に大企業向けに提供する光ファイバー通信サービス「INS1500」で利用されています。その場合は、サービス名で「INS1500回線」とも呼ばれます。今回はこのPRI回線とチャネルの設定について詳しく見ていきましょう。
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PRI回線は1回線に23チャネル
最初にPRI回線とチャネルについて整理しておきましょう。
PRI回線は、通信用の「Bチャネル」と制御用の「Dチャネル」で構成されていて、通信用のBチャネルは1回線に23チャネルあります。チャネル数とは、同時に通話が可能な数のことです。これを「同時接続数」と呼びます。
ここでの通話の考え方は少し特殊なので、以下に解説します。
オペレーターとお客様の1件の通話は1チャネルとカウントします。転送の場合、お客様とオペレーターをつないだまま別のオペレーターにも一時的につなぐので、1度に2チャネルを使用することになります。また、お客様が通話待ちの状態を「待ち呼(まちこ)」と呼びますが、1件の待ち呼あたり1チャネルを使います。
例えば、コールセンターで10人のお客様と電話対応していて、それとは別に2件を転送中で、さらに待ち呼が5件ある場合は、「10チャネル+(2チャネル×2)+5チャネル」となり、その時点での同時接続数は19チャネルとカウントされます。
尚、転送された案件は、転送が完了した後もその通話が終了するまで2回線分占有しています。
<チャネルの数え方_例>
新しくコールセンターを開設する時に回線数を決める必要がありますが、その際に上記の同時接続数を考慮して適切なPRI回線の数を判断することが大切です。
その時に気を付けたいのが、以下のようなケースです。仮に席数が20席でSV(スーパーバイザー)が3人の場合、20+3=23なので「23チャネルで足りるからPRI回線は1回線でいい」と判断するのは早計です。
というのも、前述のとおりオペレーターとお客様の通話以外に、待ち呼や転送なども同時接続数に含まれます。上記のケースであれば、SVを含めすべての席で通話中であれば、23チャネルが埋まってしまいます。すべてのチャネルが埋まってしまうと、別のお客様が新たに電話をかけても待ち呼に入ることもできず、「ツーツーツー」と電話がつながらない状態になってしまいます。
そのため、回線数を設定する際はコールセンターの席数やSVの席数、その拠点で対応するコールボリュームに加え、待ち呼の数や転送などを考慮して、余裕を持たせた回線設計が求められます。
先ほどの20席でSVが3人のケースだと、待ち呼を5人とした場合、「20+3+5=28」となるため、PRI回線は2回線(46チャネル)必要になってきます。
電話番号の数は、回線数やチャネル数と関係ない
PRI回線はNTTなどキャリアと契約し、契約後に「VoIP(ボイップ)ゲートウェイ」と呼ばれる機器に物理的な線をさしてPRI回線をつなぎます。
その際に、PRI回線を2回線や3回線といったようにPRI回線単位での契約だけでなく、PRI回線の23チャネルをバラして1チャネル単位で契約することも可能です。コールボリュームや席数が少なく、数チャネルあれば足りるようなケースでは、チャネル単位で契約するのがおすすめです。
さらに押さえておきたい点としては、電話番号の扱いです。回線数やチャネル数とは別に、電話番号はいくつでも設定できます。回線数やチャネルというのは、あくまで「同時接続数」の上限を示すものであるため、その入り口となる電話番号は同時接続数に関係なく設定可能です。
例えば1つの電話番号にたくさんの電話がかかってくるような大型コールセンターであれば、PRI回線が3回線69チャネルに対して電話番号は1種類になることもあるでしょう。
一方、さまざまな電話番号から少ない頻度で電話がかかってくるのであれば、1回線23チャネルに対して50種類や100種類の電話番号を登録することも可能です。案件ごとに電話番号を分けているコールセンターで1番号あたりのボリュームが少ない場合などがこれにあたりますね。
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「代表組」でチャネル間に壁を作る
PRI回線の設定をする際に、電話番号によってグループを作る方法があります。
先ほどの案件ごとに電話番号を分けているようなコールセンターで、仮にPRIが2回線で46チャネルを契約し、案件別に100種類の電話番号(1案件に1番号)を登録しているとします。
例えば、ある案件Aのみ突出してコール数が多い場合、案件Aのコールが多すぎて同時接続数の上限を超えてしまい、ほかの99案件の対応ができなくなるリスクが生じてしまいます。
こうした事態を防ぐために、99案件の電話番号に10チャネルを、案件Aには36チャネルを割り当てることができます(もちろんチャネルの分配割合は自由に設定可能です)。この場合、案件Aのコールがあふれても、99案件用に10チャネル確保してあるので案件Aの影響を受けることはありません。
<代表組イメージ>
つまりチャネルを明確に分けて壁を作り、コールが少ない電話番号用にチャネルを確保しておくわけです。
このように電話番号ごとにまとまりを作ったり、チャネルの割り振りを決めたりする作業を「代表組」と呼びます。
空港の保安検査場に行列ができているのに、ファーストクラスやビジネスクラスの乗客向けの優先レーンはガラガラにすいている状態をイメージしてください。複数のレーン(電話におけるチャネル)が混み合っていても、特定のレーンは数少ない優良顧客のために確保して必ず空けておきます。代表組は同様のことを電話回線で実現するわけですね。
実際にコールセンターを稼働する際には、上記のポイントを押さえ、コールボリュームや拠点の規模などを踏まえて回線数を設定しつつ、案件に合わせてチャネルや電話番号について代表組をすることが大事になります。
[最終更新:2023年12月1日]